「宇宙ものは息苦しいから避けてきた」
正直に言うと、これが観る前の私の本音でした。閉鎖空間、酸素の心配、果てしない孤独――宇宙を舞台にした映画には、どうしても胸が詰まるような息苦しさがつきまとう印象があったのです。
ところが、観終わった今、二週間が経ってもこの映画が頭から離れません。
パンフレットだけは入手したものの、グッズが売っていないことが本気で悔しくて、ファンアートを追いかける日々を送っています。
毎年30〜50本ほど映画を観る私が、自信を持って「ここ数年で最高の一本」と言い切れる作品。それが「プロジェクト・ヘイル・メアリー」です。
映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』とは?作品概要

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(原題:Project Hail Mary)は、2026年3月20日に公開されたSFヒューマンドラマです。
原作は『火星の人(オデッセイ)』で知られるアンディ・ウィアーの同名小説。『LEGO ムービー』『スパイダーバース』シリーズのフィル・ロード&クリストファー・ミラーが監督を務め、ライアン・ゴズリングが主演を担当しています。
プロジェクト・ヘイル・メアリーのあらすじ:記憶を失った男、宇宙で目覚める
主人公ライランド・グレース(ライアン・ゴズリング)は、目を覚ますと見知らぬ宇宙船の中。自分が誰なのか、なぜここにいるのか、何も思い出せません。
断片的に蘇る記憶から、彼がかつて地球で中学校の化学教師だったこと、そして太陽の光を食い尽くす未知の微生物「アストロファージ」によって地球が滅亡の危機に瀕していることが明らかになっていきます。
グレースは人類最後の希望として、遥か彼方の恒星系へと送り出されていたのです。
なお、宇宙船の名前でもある「ヘイル・メアリー」は、もともとアメリカンフットボールの用語です。
試合終了間際に行う、成功する可能性が低い「最後の一手」を指します。
つまり、日本語で言うと「イチかバチかの賭け」に近い意味です。
宇宙で出会った、もう一人の「孤独」
絶望的な任務の最中、グレースは異星の宇宙船と遭遇します。そこに乗っていたのは、地球とはまったく異なる環境で生まれた知的生命体「ロッキー」。ロッキーもまた、自分の星を救うために40年以上もの間、たった一人で宇宙をさまよっていました。
言葉も、姿も、呼吸する空気さえも違う。それでも二人は、互いの星を救うために手を取り合うことになるのです。
プロジェクト・ヘイル・メアリー: 主要キャスト
ライランド・グレース(ライアン・ゴズリング):記憶を失った化学教師。地球では孤独を感じていた男が、宇宙で本当の自分と向き合う。
エヴァ・ストラット(ザンドラ・ヒュラー):地球の危機を救うプロジェクトを率いる指揮官。
ロッキー(声:ジェームズ・オーティス):異星の知的生命体。グレースの「相棒」にして、本作最大の魅力。
プロジェクト・ヘイル・メアリーの3つの見どころ
ここでは、映画を見た直後に興奮が収まらず、原作小説を読んだ私が、プロジェクト・ヘイル・メアリーの3つの見どころについて紹介します。
ネタバレゼロで見たい人は、ここで閉じて劇場に足を運ぶことをおすすめします。
1. ロッキーという存在のすべてが愛おしい
この映画の最大の魅力は、間違いなくロッキーです。
ロッキーは人間とはまったく異なる姿をした生命体。目もなければ人間のような表情もありません。しかし、そのしゃべり方、好奇心旺盛な性格、問題にぶつかったときの反応のひとつひとつが、観ているうちにどうしようもなく愛おしくなってきます。
「異星人」なのに、その感情は驚くほどまっすぐに伝わってくる。CGで描かれた無機質な生命体のはずなのに、映画が終わる頃には「好き」以外の感情が見当たらなくなっていました。
2. 言葉が通じない者同士が心を通わせる過程
グレースとロッキーは、最初はまったく言葉が通じません。音の高低やリズムで意思を伝えるロッキーと、英語で話すグレース。この二人が少しずつコミュニケーションを築いていく過程が、地道なのに目が離せないのです。
科学的な知識を共有し、互いの文化の違いに驚き、時にはすれ違いながらも信頼を深めていく。その一つひとつが丁寧に描かれているからこそ、二人の関係に確かな重みが生まれています。
バディものが好きな私にとって、この関係性はたまりませんでした。種族も星も何もかも違うのに、ここまで「尊い」と感じるバディに出会えるとは思っていませんでした。
3. 映像と音楽が生み出す宇宙の「壮大さ」
宇宙を舞台にした映画は数多くありますが、本作の映像美は格別です。
特に印象的なのは、グレースの宇宙船とロッキーの宇宙船が初めて出会うシーン。宇宙空間で二隻の船がまるでワルツを踊るように接近していく様は、途方もなく壮大で、それでいてどこか「はじめまして」の挨拶のような親しみがあります。無機物同士なのに、宇宙なのに、嬉しさが伝わってくる。このシーンだけでもチケット代の価値があります。
音楽もまた映像に見事に寄り添っていて、宇宙の静寂と壮大さを同時に感じさせてくれます。
プロジェクト・ヘイル・メアリーを実際に観た正直すぎる感想
ここから少しだけ核心に触れます(大きなネタバレはしません)。
この映画を観て一番強く残ったのは、グレースが「ある決断」をする場面です。
地球にいた頃のグレースは、宇宙へ行くことを最後まで拒んでいました。嫌で嫌で、無理やり宇宙船に乗せられた男です。しかし物語の終盤、彼はある人のために自分の意思で命を懸ける選択をします。
地球では「行きたくない」と泣いていた男が、宇宙において死を覚悟してでも「行く」と決める。この対比があまりにも鮮やかで、胸が震えました。
プロジェクト・ヘイル・メアリー正直レビュー:原作ファンとして一つだけ惜しい点
映画としてはほぼ完璧です。しかし、後から原作小説を読んで一つだけ思ったことがあります。
原作には「グレースがわざと記憶喪失になるように仕込まれていた」という設定があり、これがかなりゾッとする重要なエピソードです。映画ではこの部分がカットされ、代わりに同僚カールとの買い物シーンやカラオケシーンなど、日常的なエピソードに尺が使われています。
カールとのシーンは本当に楽しくて大好きです。しかし、あの楽しい日常を描くことで、地球でのグレースの「孤独感」がやや薄まっている面も否めません(もちろん、あれほど仲良くなったカールですら最終的にグレースを助けに来なかったという絶望感は増すのですが)。
原作の「仕込まれた記憶喪失」のゾクッとする感覚を映画でも味わいたかった、というのが唯一の贅沢な不満です。
プロジェクト・ヘイル・メアリーはこんな人におすすめ
プロジェクト・ヘイル・メアリーはこんな人におすすめします!
バディものが好きな人 → これ以上ない「異種バディ」に出会えます
宇宙ものが好きな人 → 映像美と科学考証のバランスが秀逸
『TENET』のような知的興奮が好きな人 → 科学をベースにしたパズル的展開にハマるはず
映画で泣きたい人 → グレースの選択と、ロッキーとの絆に心を持っていかれます
逆にこんな人は注意
プロジェクト・ヘイル・メアリーは上映時間156分と長めです。長い映画だと集中力が持たないタイプの方は、体調の良い日に観ることをおすすめします(でも観始めたら気にならないはず)
プロジェクト・ヘイル・メアリーの感想まとめ:宇宙が苦手でもいい、とにかく観てほしい
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、宇宙SFの皮をかぶった、最高のバディ映画です。
宇宙が苦手だった私が二週間経っても頭から離れないのだから、間違いありません。ロッキーに会いに行ってください。きっと、あなたもロッキーのことが好きになります。
そして観終わった後、グッズが売っていないことに一緒に悔しがりましょう。
ちなみに、映画を見た後に小説を読んだのですが、とてつもなく良かったです。
映画でわからなかったこと全部、小説に書いてあるので未読の方は要チェック✨
作品情報
タイトル:プロジェクト・ヘイル・メアリー(原題:Project Hail Mary)
公開日:2026年3月20日
上映時間:156分
監督:フィル・ロード&クリストファー・ミラー
主演:ライアン・ゴズリング
原作:アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(早川書房)
評価:⭐⭐⭐⭐⭐





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